糖尿病専門医・指導医 野見山崇 | 糖尿病についてのコラム

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糖キング 糖の流れに魅せられた男が語る(Talking)糖尿病のお話。 二田哲博クリニック 糖尿病専門医・指導医 野見山崇

【第01話】
多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン

インスリンという言葉を聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょう。“どうしようもなくなった終末期の糖尿病患者さんが止むを得ず打っている注射薬”というイメージがあるかもしれませんが、それは大きな誤解です。インスリンの発見は人類の歴史を変え、多くの人の命を救った大発見です。

バンティング先生とベスト先生

(右)整形外科医:フレデリック・バンティング(Frederick Grant Banting)氏 (左)医学生:チャールズ・ベスト(Charles Best)氏 *手前はインスリンの抽出実験に使われた犬

1921年、カナダのトロント大学にバンティング先生とベスト先生の研究チームがありました。外科医だったバンティング先生と医学生でありましたが化学に長けていたベスト先生は見事なコンビネーションでインスリンの抽出に成功しました。インスリンの発見前、1型糖尿病は死の病でした。飢餓療法という最近で言うところの低炭水化物食が患者に強いられ、ミイラ化して亡くなるのを待つのみの悲惨な病気で、多くの幼い命が失われていきました。しかし、インスリンの発見によって、やせ細った患者の体は瑞々しい肉体を取り戻すことが出来たのです。この功績が讃えられ、インスリンの発見は1923年ノーベル賞に輝きました。残念なことに、当時まだ医学生であったベスト先生は、ノーベル賞受賞者に名前が入っていません。当時は(今も?)学閥や研究者間での推薦が重要視されていたため、学生であったベスト先生の名は推薦されなかったそうです。しかし、その後トロント大学の生理学の教授になられたベスト先生は、現在世界中で活躍されている多くの医師や研究者を輩出しました。その中の一人が私の師匠である河盛隆造先生です。従って、私はインスリン発見者の一人、ベスト先生の孫弟子です!!

私の勝手な自慢話はさておき、インスリン発見の凄いところは、発見から93年が経った今でも、インスリン療法が糖尿病治療の第一線で臨床使用されているところです。また、その後の研究で様々な抗糖尿病薬が発見されますが、その多くがインスリン作用を介しており、たとえ肥満した2型糖尿病であってもインスリンの作用不足が原因で発症しています。あらゆるゆるタイプの糖尿病に適した治療であるインスリンは抗糖尿病薬のミラクルドラックであり、いつの時代も糖尿病診療の三種の神器は食事・運動・インスリンと言えます。ですから、インスリン療法を嫌がらず、1921年の発見に感謝しながら、より早期に導入し、血糖をコントロールしていただきたいと思います。もしもバンティング先生とベスト先生が成し遂げた1921年夏の大発見がなければ、我々は今でも糖尿病患者さんに飢餓療法を指導していたかもしれません。

①インスリン物語 二宮陸雄 著 ②ミラクル-エリザベス・ヒューズとインスリン発見の物語- T・クーパー、A・アインスバーグ 著

ここで2冊の本をご紹介しましょう。“①インスリン物語”と“②ミラクル”です。インスリン発見とそれに関わった人々の物語が書いてあります。ぜひ①→②の順番で読んでください。間もなくインスリン発見100周年を迎えます。果たして我々は100年前インスリンを発見したバンティング先生とベスト先生に認めて頂けるだけの糖尿病診療が出来ているのでしょうか、、、、。



<残心>インスリンとインシュリン
インスリンは英語で書くとINSULINです。しかし、日本語で“インスリン”と表記されている場合と“インシュリン”と表記されている場合があります。何故でしょう?単刀直入にいうとインスリンが正解でインシュリンが間違いです。英語では“SU”の発音はSUGAR(シュガー)のようにシュが正しい発音かもしれませんが、インスリンと表記するよう決められています。ですから“低インシュリン・ダイエット”のような表記をしている本や雑誌は、由緒正しい糖尿病学を学んでいない人が執筆していますので、惑わされないように注意してください。





残心(ざんしん)】日本の武道および芸道において用いられる言葉。残身や残芯と書くこともある。文字通り解釈すると、心が途切れないという意味。意識すること、とくに技を終えた後、力を緩めたりくつろいでいながらも注意を払っている状態を示す。また技と同時に終わって忘れてしまうのではなく、余韻を残すといった日本の美学や禅と関連する概念でもある。(Wikipediaより一部抜粋・転載)






【第01話】多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン
【第02話】HbA1cの呪縛
【第03話】糖尿病と癌
【第04話】糖毒性という名のお化け
【第05話】医者らしい服装とは?
【第06話】食後高血糖のTSUNAMI
【第07話】DMエコノミクス
【第08話】インクレチンは本当にBeyondな薬か?
【第09話】守破離(しゅ・は・り)
【第10話】EMPA-REG OUTCOMEは糖尿病診療の世界を変えるか?
【第11話】新・糖尿病連携手帳
【第12話】過小評価されている抗糖尿病薬・GLP-1受容体作動薬
【第13話】ADAレポート2016
【第14話】メトホルミン伝説
【第15話】Weekly製剤を考える
【第16話】糖と脂の微妙な関係
【第17話】チアゾリジン誘導体の再考~善とするか「悪とす」か~
【第18話】糖尿病患者さんの死因アンケート調査から考える
【第19話】Class EffectかDrug Effectか
【第20話】糖尿病治療薬処方のトリセツ執筆秘話
【第21話】大規模臨床試験の影の仕事人
【第22話】低血糖の背景に、、、
【第23話】ミトコンドリア・ルネッサンス
【第24話】血管平滑筋細胞の奥深さ
【第25話】運動療法温故知新
【第26話】糖尿病アドボカシー
【第27話】GLP-1の真の目的は何か
【第28話】糖尿病連携手帳 第4版
【第29話】残存リスクを打つべし!
【第30話】糖尿病という病名は変更するべきか
【第31話】合併症と併存症
【第32話】メディカルスタッフ
【第33話】新・自己管理ノート
【第34話】グルカゴン点鼻薬とスナッキング肥満
【第35話】SGLT2阻害薬 For what?
【第36話】血糖値と血糖変動のアキュラシー
【第37話】経口GLP-1受容体作動薬
【第38話】コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療
【第39話】HbA1cはウソをつく、こともある
【第40話】糖尿病治療ガイド2022-2023:私のポイント
【第41話】順天堂大学医学部附属静岡病院
【第42話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
【第43話】降圧薬のBeyond
【第44話】糖尿病治療はデュアルの時代
【第45話】兄貴に捧げるラストソング
【第46話】血糖だけにこだわらない!糖尿病治療薬の考え方・使い方
【第47話】糖尿病は治るのか?
【第48話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)
【第49話】医師の働き方改革
【第50話】GLP-1受容体作動薬のセレクト
【第51話】肥満症の治療薬
【第52話】Dear ケレンディア
【第53話】高齢ダイアベティスの極意~キョウイクとキョウヨウ~
【第54話】尿アルブミンは心血管の鏡

*文章、画像等を無断で使用することを固く禁じます。

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