糖尿病専門医・指導医 野見山崇 | 糖尿病についてのコラム

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糖キング 糖の流れに魅せられた男が語る(Talking)糖尿病のお話。 二田哲博クリニック 糖尿病専門医・指導医 野見山崇

【第57話】
JADEC連携手帳 第5版

あれから9年の月日が流れたのかと、長くもあっという間の時間経過に驚かされる。私が初めて編集委員長として連携手帳の改訂に携わった第3版が発行されたのが平成28年(2016年)、その後2020年に第4版が発行され、ついに今年7月第5版が発行された。第4版の評判が非常に良かったので、今回は簡単なマイナーチェンジでいいよねと言って始まったグッズ委員会の会合であったが、このメンバーが集まったら一筋縄ではいかない。あれやこれやと5年前はOKでも今の時代にそぐわないことが発覚し、結局大幅に改訂した第5版が新たに出来上がった。
まず、表紙を大きく変えた。糖尿病連携手帳をJADEC連携手帳に変更したのだ。“糖尿病”という病名を極力公にしないように配慮した。上段に糖尿病、下段に氏名があると、〇〇さんは糖尿病ですよと言っているかのようで、個人情報の漏洩に繋がると考えた。また、JADECという団体名を打ち出すことで、我々の活動をアピールしたかった。そもそも“糖尿病”連携手帳と銘打っていたが、内容は合併症や併存疾患のことが盛り込まれており、糖尿病の枠を超えた健康管理手帳になっていたので、このタイトルの方が相応しいのかもしれない。

糖キング第57話「JADEC連携手帳 第5版」表紙 野見山崇
糖キング第57話「JADEC連携手帳 第5版」ダイアベティス連携の概要と説明 野見山崇

2~3頁の連携の輪に関連企業社員という新たなメンバーを加えた。関連企業で働く皆さんも、ただの“メーカー”ではなく立派な医療従事者の一員であることを示している。JADECではCDE同様に、ダイベティス関連企業EXPERT社員を認定している(ダイアベティス関連企業EXPERT社員認定制度|公益社団法人日本糖尿病協会)。企業人としてだけではなく、医療者としての自覚を持って活動して頂きたい。最近、糖尿病診療と肥満治療を混同し、売り上げ至上主義で糖尿病・内分泌専門医以外の内科医を巻き込んで、体重減少が期待できる糖尿病治療薬を猛烈に宣伝し、“痩せれば何でも良くなるんだ!”といった風潮を吹き込む製薬企業があるが言語道断である。糖尿病学Diabetologyの基本は“糖のながれ”であり(順天堂医学,2008,54,P121-132)、糖尿病治療の基本は強化インスリン療法であることを忘れてはならない。
受診時の検査データを書く欄と眼科・歯科のページは概ねそのままとし、関連検査の頁は空欄を増やし、内視鏡検査、頭部MRI、骨塩定量などの追加検査の結果を書き込めるようにした。 今回の改訂で、是非皆さんに読んで頂きたい“肝入り”のページは34頁アドボカシー活動/災害対策の項目だ。このページは全て柴田大河先生が作成してくれた。この小さなスペースに、アドボカシー活動の内容を実に分かりやすくまとめてくれている。そして最後の一文にあるように、第4版から第5版に改訂するにあたり、糖尿病をダイアベティスに書き換えている部分と、そのまま糖尿病としている部分があるので、両版を見比べてみて頂きたい。そして、なぜここがダイアベティスに変わって、こちらは糖尿病のままなのかを熟慮して頂きたい。アドボカシー活動という大きな潮流の中で、糖尿病をダイベティスに変更するという呼称・病名変更の立ち位置がぼんやりとでも浮き彫りにってくるのではないか。

糖キング第57話「JADEC連携手帳 第5版」アドボカシー活動/災害対策 野見山崇

今回の改訂の際、我々が気付いてしまった重大な点がある。それは委員の高齢化、マンネリ化と偏りだ。グッズ委員会は元々JADEC幹事から派生したので、10年ほど前の発足当初は皆“若手”だった。しかし今、メンバーはほぼほぼ50代半ばである。しかも、全員が男性医師で教授、院長、センター長、部長などの管理職というダイバーシティを重要視する世の中に反する構成メンバーになっていることに気付いた。第6班の改訂の際には、今の若手、女性、メディカルスタッフの意見も是非取り入れたい。

糖キング第57話「JADEC連携手帳 第5版」JADECグッズ編集委員会 野見山崇

JADECグッズ編集委員会(以下敬称略)
委員長  野見山 崇順天堂大学医学部付属静岡病院糖尿病・内分泌内科
副委員長 柴田 大河大垣市民病院糖尿病・腎臓内科
委員   赤司 朋之嶋田病院内科
委員   津村 和大川崎市立川崎病院糖尿病内科/臨床研究支援室
委員   下野  大二田哲博クリニック姪浜
委員   中村 昭伸北海道大学大学院医学研究院免疫・代車内科学教室
委員   田中 永昭枚方公済病院内分泌代謝内科
委員   濱田 淳平愛媛大学大学院医学系研究科小児科学
委員   矢部 大介京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学分野
委員   松橋 有紀弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科講座
委員   脇  裕典秋田大学大学院医学系研究科代謝・内分泌内科学講座


<残心>DI Best Impact Award
日本糖尿病学会の発行している英文誌Diabetology International(DI)に山本玲央那先生の出された論文“Sodium-glucose cotransporter 2 inhibitor canagliflozin attenuates lung cancer cell proliferation in vitro (Diabetol Int, 12, 389-398(2021)”が、第68回日本糖尿病学会年次学術集会DI Best Impact Awardを受賞しました(DI Best Impact Award|一般社団法人日本糖尿病学会)。この賞は、DIに掲載された論文で過去3年間に最も引用され、インパクトを与えた論文に与えられる賞で、世界中からの注目度が高く評価された論文であることを表しています。筆頭著者であった山本先生が米国留学中であるため、ご本人と事務局に依頼され責任著者であった私が代理で授賞式に出ました(写真)。この論文の内容は第35話でも少し触れていますが、SGLT2がヒトの肺がん組織にも発現していて、ヒト肺がん細胞の増殖をカナグリフロジン(カナグルⓇ)というSGLT2阻害薬が抑制するという内容です。この論文がBest Impact Awardを受賞することには大きな意味があります。今まで、糖尿病の合併症・併存疾患の研究というのは、なぜか腎症を研究している人が一番威張っていて、その次に動脈硬化や他の細小血管合併症があって、がんの研究はまさに“すみっコぐらし”でした。しかし今回の受賞で、世界が注目するのは腎症ではなく“がん”であることが証明されたのです。大変誇らしい事ではありますが、一つ心残りなことがあります。この研究を行っている途中で、福岡大学を去ることになりました。そのため詳細な分子メカニズムを追求する時間がなく、表面上の事実だけを検証した中途半端な状態で論文化せざるを得ませんでした。世界に認められたことを契機に、SGLT2阻害薬とがんの研究の続きを順天堂大学で再稼働したいと思っています。5年後のDI Best Impact Awardを受賞したい若い医師・研究者は、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学(静岡)の大学院生になってください。待ってます!

糖キング第57話「JADEC連携手帳 第5版」Diabetology International Best Impact Award 野見山崇






残心(ざんしん)】日本の武道および芸道において用いられる言葉。残身や残芯と書くこともある。文字通り解釈すると、心が途切れないという意味。意識すること、とくに技を終えた後、力を緩めたりくつろいでいながらも注意を払っている状態を示す。また技と同時に終わって忘れてしまうのではなく、余韻を残すといった日本の美学や禅と関連する概念でもある。(Wikipediaより一部抜粋・転載)






【第01話】多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン
【第02話】HbA1cの呪縛
【第03話】糖尿病と癌
【第04話】糖毒性という名のお化け
【第05話】医者らしい服装とは?
【第06話】食後高血糖のTSUNAMI
【第07話】DMエコノミクス
【第08話】インクレチンは本当にBeyondな薬か?
【第09話】守破離(しゅ・は・り)
【第10話】EMPA-REG OUTCOMEは糖尿病診療の世界を変えるか?
【第11話】新・糖尿病連携手帳
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【第13話】ADAレポート2016
【第14話】メトホルミン伝説
【第15話】Weekly製剤を考える
【第16話】糖と脂の微妙な関係
【第17話】チアゾリジン誘導体の再考~善とするか「悪とす」か~
【第18話】糖尿病患者さんの死因アンケート調査から考える
【第19話】Class EffectかDrug Effectか
【第20話】糖尿病治療薬処方のトリセツ執筆秘話
【第21話】大規模臨床試験の影の仕事人
【第22話】低血糖の背景に、、、
【第23話】ミトコンドリア・ルネッサンス
【第24話】血管平滑筋細胞の奥深さ
【第25話】運動療法温故知新
【第26話】糖尿病アドボカシー
【第27話】GLP-1の真の目的は何か
【第28話】糖尿病連携手帳 第4版
【第29話】残存リスクを打つべし!
【第30話】糖尿病という病名は変更するべきか
【第31話】合併症と併存症
【第32話】メディカルスタッフ
【第33話】新・自己管理ノート
【第34話】グルカゴン点鼻薬とスナッキング肥満
【第35話】SGLT2阻害薬 For what?
【第36話】血糖値と血糖変動のアキュラシー
【第37話】経口GLP-1受容体作動薬
【第38話】コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療
【第39話】HbA1cはウソをつく、こともある
【第40話】糖尿病治療ガイド2022-2023:私のポイント
【第41話】順天堂大学医学部附属静岡病院
【第42話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
【第43話】降圧薬のBeyond
【第44話】糖尿病治療はデュアルの時代
【第45話】兄貴に捧げるラストソング
【第46話】血糖だけにこだわらない!糖尿病治療薬の考え方・使い方
【第47話】糖尿病は治るのか?
【第48話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)
【第49話】医師の働き方改革
【第50話】GLP-1受容体作動薬のセレクト
【第51話】肥満症の治療薬
【第52話】Dear ケレンディア
【第53話】高齢ダイアベティスの極意~キョウイクとキョウヨウ~
【第54話】尿アルブミンは心血管の鏡
【第55話】SGLT2阻害薬 For what?第2章
【第56話】“あいうえお、かきくけこ、さしすせそ”
【第57話】JADEC連携手帳 第5版
【第58話】12th JADEC年次学術集会

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