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糖キング 糖の流れに魅せられた男が語る(Talking)糖尿病のお話。 二田哲博クリニック 糖尿病専門医・指導医 野見山崇

【第02話】
HbA1cの呪縛

ヘモグロビンA1c(HbA1c)とは、一般的に血糖コントロールの指標(平均値)とされ、我々はこれが7%を下回ることに全身全霊を費やし、日々診療をしている。

HbA1cとは

“今回は0.2%下がって7.2%だからあと少しで合格点ですよ!!”こんな会話をし、一喜一憂しているのだ。患者さんも医師もHbA1cが低い人が優等生でいい人、高い人は劣等性でだめ人間のような妄想に陥っている。しかし、果たしてその考え方は正しいのであろうか。そもそも、HbA1cを低値に保つことは、血管合併症の発症進展を抑制するための指標として有用である。ということは合目的に考えると、HbA1cが高くても合併症が発症進展しなければ良いのではないか、という穿った見方もできる。


一般社会においても同様の妄想がある。それは受験生における“偏差値”ではないであろうか。子供の頃勉強ができなかった私は、偏差値が低いということで人格まで全否定された経験を何度もしている。しかし、偏差値が高い学校が良い学校で、偏差値が低い学校が悪い学校とは限らない。また、入学した学校での友人や教官との出会いを考えると、偏差値が低い学校に入ることが功を奏する可能性もある。実際、私は医学部を4校受験して順天堂大学しか合格できなかったが、そこでの出会いが人生を大きく変えた。もしも私がもう少し勉強ができて、もう少し偏差値の高い医学部に入っていたら今の私はなかったかも知れない(笑)。

また、剣道と糖尿病診療は似ていると思うことがある。剣道の理念(目的)とは“剣の理法の修練による人間形成の道である”と説かれている(全日本剣道連盟ウェブサイトより抜粋)。つまり、人間形成のための方法として打ち合いをしているわけであるが、我々剣道家の会話は打った打たれた、試合に勝った負けた、段審査に合格したといった類のことで、決して誰も人間形成について語ろうとはしない。それはまるで、糖尿病診療の目的が、患者の生活の質を維持し寿命を確保することにあるにもかかわらず、HbA1cの動向のみに一喜一憂していることに酷似している。

HbA1cの呪縛を、より強固にしているのが製薬メーカーの宣伝資料だ。弊社の薬のほうが他社の薬よりもHbA1c低下度が強いですと、鬼の首を取ったかのように宣伝をする。それに乗せられてしまう医師にも問題があるが、ヒトとは弱い生き物で、反復して言われるとそれが正しく重要なことのように思えてくる。もう、低俗なHbA1c合戦は終わりにしませんか?

HbA1cの呪縛から逃れ、本質を見据えた糖尿病診療を心がけたい。しかし私は、HbA1cが高いまま放置してもいいと言っているわけではない。HbA1cを下げることは必要条件であって、十分条件ではないと言っているまでなので、誤解しないで頂きたい。



HbA1cと発熱

<残心>HbA1cと発熱
HbA1cという数値がピンとこない患者さんに、私は“お熱と一緒ですよ”と説明しています。

HbA1c7.5%ということは、お熱が37.5℃あるのと同じですよ。それだけ熱があれば、風邪薬を飲みますよね。だから抗糖尿病薬を飲みましょう。

HbA1c9.2%ということは、お熱が39.2℃あるのと同じですよ。それだけお熱があれば点滴注射をしてほしいですよね、ですからインスリン注射をしましょう。

このような患者さん目線での説明が、糖尿病診療には重要と思います。
HbA1c7.0%を切って、36度台の平熱になりましょうと声をかけると、患者さんもイメージがわくのではないでしょうか。





残心(ざんしん)】日本の武道および芸道において用いられる言葉。残身や残芯と書くこともある。文字通り解釈すると、心が途切れないという意味。意識すること、とくに技を終えた後、力を緩めたりくつろいでいながらも注意を払っている状態を示す。また技と同時に終わって忘れてしまうのではなく、余韻を残すといった日本の美学や禅と関連する概念でもある。(Wikipediaより一部抜粋・転載)






【第01話】多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン
【第02話】HbA1cの呪縛
【第03話】糖尿病と癌
【第04話】糖毒性という名のお化け
【第05話】医者らしい服装とは?
【第06話】食後高血糖のTSUNAMI
【第07話】DMエコノミクス
【第08話】インクレチンは本当にBeyondな薬か?
【第09話】守破離(しゅ・は・り)
【第10話】EMPA-REG OUTCOMEは糖尿病診療の世界を変えるか?
【第11話】新・糖尿病連携手帳
【第12話】過小評価されている抗糖尿病薬・GLP-1受容体作動薬
【第13話】ADAレポート2016
【第14話】メトホルミン伝説
【第15話】Weekly製剤を考える
【第16話】糖と脂の微妙な関係
【第17話】チアゾリジン誘導体の再考~善とするか「悪とす」か~
【第18話】糖尿病患者さんの死因アンケート調査から考える
【第19話】Class EffectかDrug Effectか
【第20話】糖尿病治療薬処方のトリセツ執筆秘話
【第21話】大規模臨床試験の影の仕事人
【第22話】低血糖の背景に、、、
【第23話】ミトコンドリア・ルネッサンス
【第24話】血管平滑筋細胞の奥深さ
【第25話】運動療法温故知新
【第26話】糖尿病アドボカシー
【第27話】GLP-1の真の目的は何か
【第28話】糖尿病連携手帳 第4版
【第29話】残存リスクを打つべし!
【第30話】糖尿病という病名は変更するべきか
【第31話】合併症と併存症
【第32話】メディカルスタッフ
【第33話】新・自己管理ノート
【第34話】グルカゴン点鼻薬とスナッキング肥満
【第35話】SGLT2阻害薬 For what?
【第36話】血糖値と血糖変動のアキュラシー
【第37話】経口GLP-1受容体作動薬
【第38話】コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療
【第39話】HbA1cはウソをつく、こともある
【第40話】糖尿病治療ガイド2022-2023:私のポイント
【第41話】順天堂大学医学部附属静岡病院
【第42話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
【第43話】降圧薬のBeyond
【第44話】糖尿病治療はデュアルの時代
【第45話】兄貴に捧げるラストソング
【第46話】血糖だけにこだわらない!糖尿病治療薬の考え方・使い方
【第47話】糖尿病は治るのか?
【第48話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)
【第49話】医師の働き方改革
【第50話】GLP-1受容体作動薬のセレクト

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