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糖キング 糖の流れに魅せられた男が語る(Talking)糖尿病のお話。 二田哲博クリニック 糖尿病専門医・指導医 野見山崇

【第15話】
Weekly製剤を考える

糖尿病治療薬も週1回製剤の時代がやってきた。糖尿病治療とは、とにかくこまめに血糖値を測定し、頻回にインスリン注射を行うことが重要であるとの師匠の訓示を受けた私にとって、週に1回内服もしくは注射をするだけで、血糖を調節してくれる薬が市場に現れるとは夢のまた夢だ。これはGLP-1を中心としたインクレチンが、ただ血糖を下げるのではなく、グルカゴンとインスリンのバランスを調節し、血糖を“いい感じ”に調整してくれるからこそなせる業といえる。現在、4種類の週1回製剤が臨床応用されており、DPP-4阻害薬(トレラグリプチン、オマリグリプチン)とGLP-1受容体作動薬(デュラグルチド、エキセナチド)はいずれもインクレチン関連薬に位置づけられる。では、これらをどのように使いこなしていくべきであろうか。



DPP-4阻害薬はわが国で最も処方されている糖尿病薬の一つである。7種類のDPP-4阻害薬を有する我が国は、まさにDPP-4阻害薬天国といっても過言ではない。多くのものが1日1回つまり週に7錠内服することになるが、これが週に1回になると週に1錠となり、週に6錠の錠数削減ができる。1日2回のDPP-4阻害薬を内服している患者さんであったら週になんと11錠の錠数削減ができる。しかも血糖降下作用はほぼ同等で、薬剤によってはコストも低下するとなれば、間違いなく週に1回の製剤の方がお得である。しかし、実際外来で患者さんに“DPP-4阻害薬を週に1回にできますけどいかがですか?”と聞いてみると、“はい!”と答えるのは意外に半分程度である。その理由は“他の薬も毎日飲んでいるから”とか“週に1回の方が忘れてしまいそうだ”といったものだ。週1回製剤のお陰で患者さんの意外な心理が学べる。実は週1回製剤は高齢者に向いているのではないかと我々は予想していたのだが、尋ねてみると思いのほか若い患者さんに人気がある。例えば出張が多いサラリーマン、1日1回のDPP-4阻害薬とメトグルコⓇ1000mgを飲んでいたら一週間の出張で7+28=35錠の薬を持っていくことになる。DPP-4阻害薬が1日2回だと42錠になる。出張先で飲み会があり、夜の内服を忘れ、翌朝二日酔いで朝食を抜くため朝の内服も忘れる、といった具合に飲み忘れが増えていく。このような患者さんに週1回のDPP-4阻害薬を使っていただき、出張に行く日に内服して頂ければ出張先で飲み会がっても最低限1週間DPP-4阻害薬の薬効は持続することができ、メトグルコⓇを500mg錠にすれば持ち運ぶ錠数も減らすことができる。

Weekly製剤

このような患者さんが週に1回製剤に適していると言える。また、必ず朝飲まなくてはならないわけでもなく、内服時間が自由なこともメリットだ。私はよく“毎週必ず見るTV番組(大河ドラマなど)の時間を内服時間にしてはどうですか”と言う。

ふくおか官兵衛くん

もちろん高齢者でも週1回製剤を好まれる方もいるので、初めから決めつけないで是非問いかけていただきたい。週1回製剤への変更を提案することで、患者さんの応答から日常生活や薬に対する考え方を垣間見ることができる。週1回のDPP-4阻害薬をファーストチョイスにという製薬メーカーがいるが私は反対だ。確かに、DPP-4阻害薬は比較的安全に使えるだが、類天疱瘡など新たな副作用も見つかっている(糖尿病 56 : 881-5, 2013)。万が一それが発症した場合、患者さんは1週間苦しむことになる。1日1回のDPP-4阻害薬で開始し、必要であれば他剤を併用し、血糖コントロールが安定したところで“1日1回を週1回にもできますがいかがでしょうか?”と問いかけるべきだ。

一方、週1回のGLP-1受容体作動薬はちょっと違う。DPP-4阻害薬より血糖降下作用が優れているうえ(Diabetes Obes Metab. 2014 Aug;16(8):748-56)、週1回だけ注射すればよい。しかも、デュラグルチドを用いたメタ解析や(Cardiovasc Diabetol. 2016 Feb 24;15(1):38)、まだ日本未承認の週1回GLP-1受容体作動薬セマグルチドを用いた前向き検討では(N Engl J Med. 2016 Nov 10;375(19):1834-1844)、心血管イベントを有意に抑制している。まさに一味違ったWeekly製剤といえる。第08話でご紹介した我々が行ってきたインクレチンのbeyondな作用の基礎研究は、インフュージョンポンプというシステムを用いて持続的にGLP-1受容体作動薬を投与しており、まさに週1回GLP-1受容体作動薬のような状態を反映している。また一方、DPP-4は肥満に伴う悪玉アディポカインであるという報告もあり(Diabetes. 2011 Jul;60(7):1917-25)、これを1週間持続的に抑制することは血糖コントロールを超えた副次的なメリットを生む可能性もある。

Weekly製剤はコンプライアンスの改善のみならず、効果の持続という点で新たな知見を生み出す可能性がある。





<残心>治験という名の治療法
治験とは、治療を兼ねた臨床試験のことで、新薬や新たな合剤、併用薬剤の有効性と安全性を科学的に評価するための試験です。ジェネリックを除いたすべての薬剤が義務付けられていて、福岡大学病院でも沢山の患者さんにご協力頂いております。最近気付いたことは、なぜか治験に入っておられる患者さんはみな血糖が良くなるということです。もちろん新しい糖尿病の薬を投与させるわけですから血糖は良くなるのかもしれませんが、半分はプラセボ(偽薬)ですし、合併症の薬という血糖には影響ない治験の患者さんも皆良くなり、前までイライラした感じの方も不思議と楽しそうに来院してくれます。その原因が治験コーディネーターにあることが分かりました。昔の治験は全て医師がうろ覚えの知識で説明し、同意取得して治療と検査をしていくものでしたが、今は全て治験コーディネーターの女性達がそれらをしてくれます。また、来院の度に笑顔で出迎え、長―い私の外来の待ち時間を一緒に雑談をしながら過ごしてくれる。まさにVIP待遇です。自分の娘や孫娘みたいな女の子に“○○さん今回は頑張りましたねっ!”と励まされたら血糖もよくなりますよね。そのせいで、神経伝導速度は変わってないのにプラセボ群もしびれなどの症状が良くなり、世に出られなかった神経障害の薬がありました(苦笑)。最近では入院中の担当医が女医の方が患者さんの予後が良いという論文もあります。
論文
きめ細やかな温かい医療が患者さんの生命力を活性化するのかもしれません。私の患者さんに対するホスピタリティーが治験コーディネーターの皆さんに劣っていたことを勉強させられ、反省しております。








残心(ざんしん)】日本の武道および芸道において用いられる言葉。残身や残芯と書くこともある。文字通り解釈すると、心が途切れないという意味。意識すること、とくに技を終えた後、力を緩めたりくつろいでいながらも注意を払っている状態を示す。また技と同時に終わって忘れてしまうのではなく、余韻を残すといった日本の美学や禅と関連する概念でもある。(Wikipediaより一部抜粋・転載)






【第01話】多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン
【第02話】HbA1cの呪縛
【第03話】糖尿病と癌
【第04話】糖毒性という名のお化け
【第05話】医者らしい服装とは?
【第06話】食後高血糖のTSUNAMI
【第07話】DMエコノミクス
【第08話】インクレチンは本当にBeyondな薬か?
【第09話】守破離(しゅ・は・り)
【第10話】EMPA-REG OUTCOMEは糖尿病診療の世界を変えるか?
【第11話】新・糖尿病連携手帳
【第12話】過小評価されている抗糖尿病薬・GLP-1受容体作動薬
【第13話】ADAレポート2016
【第14話】メトホルミン伝説
【第15話】Weekly製剤を考える
【第16話】糖と脂の微妙な関係
【第17話】チアゾリジン誘導体の再考~善とするか「悪とす」か~
【第18話】糖尿病患者さんの死因アンケート調査から考える
【第19話】Class EffectかDrug Effectか
【第20話】糖尿病治療薬処方のトリセツ執筆秘話
・・・次回「大規模臨床試験の影の仕事人」 2018年1月15日頃公開予定

*文章、画像等を無断で使用することを固く禁じます。

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