糖尿病専門医・指導医 野見山崇 | 糖尿病についてのコラム

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糖キング 糖の流れに魅せられた男が語る(Talking)糖尿病のお話。 二田哲博クリニック 糖尿病専門医・指導医 野見山崇

【第38話】
コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療

武田信玄@第38話 コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療 野見山崇

“一生懸命だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳が出る”武田信玄公の言葉だ。まさに糖尿病診療の神髄を突いた表現だと心を打たれた。一生懸命な患者さんは何とか知恵を絞って、食事・運動療法を遂行できる方法を考えている。中途半端にやらされている感が出ている患者さんは、そんなの無理ですよと愚痴を言う。いい加減にとまでは言わないが、糖尿病を軽く考えている患者さんは何かと言い訳をする。例えば忙しい、天気が悪い、お正月だから、夏休みだから、クリスマスだから等だ。
バラクーダの“日本全国酒飲み音頭”を思い出してほしい。酒を飲む理由を探せば、一年中酒が飲めるぞ!糖尿病患者さんも食事・運動療法が出来ない理由を探せば一年中できない理由はいくらでもある。そして今、まさにコロナ禍が格好の言い訳になっている。コロナだから運動出来ませんと言われると、我々医療者は“こんな時期だから仕方がないですね”としか答えようがない。しかし、コロナ禍にむしろ血糖コントロールが改善するという素晴らしい論文が、順天堂大学OGで、現在市川市で御開業の増田美央先生(ベリークリニック 糖尿病専門診療 )と長崎大学御卒業後、東京女子医科大学を経られて現在新宿区で御開業の朝長 修先生(ともながクリニック 糖尿病・生活習慣病センター|新宿 新宿三丁目|内科 循環器科 眼科 )から報告された(Diabetol Int. 2021 Apr 20;13(1):1-9.)。

新型コロナウイルス@第38話 コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療 野見山崇

まず、この論文で驚かされるのは、緊急事態宣言発令後糖尿病患者さん全体のHbA1cが改善していることだ。全国的にはコロナ禍で血糖コントロールが悪化していることが問題となっているが、両先生の患者さん達は一生懸命知恵を出して、コロナ禍でも血糖が良くなる工夫をしていると言える。さらに、どのような工夫をしている人が、血糖がより改善したかというアンケート調査を基にした多変量解析をすると、お家時間を運動に上手く充てられた人がより血糖が改善していた。まさにピンチであるはずのコロナ禍を運動するチャンスに変えられた患者さん達である。コロナだから運動出来ませんではなく、コロナだからこそ運動が出来るようにしたのだ。この論文以降“コロナだから運動が出来ていない、歩けていない”という言い訳は通用しなくなった。またこの論文では、在宅ワークなどの仕事環境の変化も、血糖コントロールに影響していないと書かれている。日頃から患者さんのモチベーションを上げて、どんな状況でも良い方向に自らを導きだすようご指導をされている賜物がこの論文と言える。この理論は勉強や研究にも通じるものがある。私は研究を指導していた大学院生に“出来ない理由ではなく、出来る方法を言いなさい”と言っていた。つまり、何々がないから出来ませんではなく、何々があったら出来ると思いますと言って欲しい。さらにこの論文には続報がある。同対象において、子供の休校などの環境変化がストレスとなる患者さんは、血糖が改善しにくいということも解明された(Intern Med 60:3879-88, 2021)。食事・運動療法の不徹底に優るとも劣らぬ血糖上昇の要因として、ストレスがある。この報告を読んだ私は最近、どう考えても過食と運動不足で血糖が上がっている患者さんにも“最近ストレスが多いんじゃないですか?”と、問いかけてみるようにしている。誰一人としてNOと答える患者さんはいない。患者さんは自分が食べすぎたのを分かっている。そこにあえて傷口に塩を塗るように追い詰めたりはせず、森羅万象の悪玉因子“ストレス様”のせいにして聞き流し、自戒を促すのも一つの得策ではないか。

糖尿病とCOVID-19の合併について、最近興味深い研究結果が報告されている。糖尿病があることではなく、糖尿病で血糖コントロールが不十分であることがCOVID-19の重症化リスク因子であることは、日本糖尿病協会のホームページに記載されているとおりだが(今、糖尿病とともに生きる人へ|公益社団法人日本糖尿病協会)、COVID-19罹患中の糖尿病治療薬の選択によって予後に違いがあるという論文が、海外でいくつか報告されている。なかでも最近Diabetes誌に報告された後ろ向きコホート研究では、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬といった抗炎症作用が期待できる薬剤を用いて血糖コントロールされたCOVID-19患者は予後が良いことが報告されている(Diabetes 2021;70:2903–2916)。ニュースでも話題になったが、COVID-19重症化の機序として呼吸器系に対する直接的なダメージのみならず、サイトカインストームの存在が示唆されている。GLP-1の多彩な作用は第12、27話でご紹介したが、炎症反応に関与する細胞に対してもサイトカイン産生の抑制に働いていることが最近分かってきた(Eur J Pharmacol 812(2017): 64-72)。通常、肺炎をはじめとした感染症の糖尿病患者さんはインスリンで血糖コントロールされるのが定石だが、これらの論文を読んだ後、COVID-19で入院してきた2型糖尿病患者さんにGLP-1受容体作動薬デュラグルチドを投与して血糖や炎症反応が改善したケースを私は何例か経験した。わが国でもコロナ禍が終わった後、COVIID-19合併糖尿病患者さんの治療選択と予後との関係を後ろ向き解析して頂きたい。

GLP-1@第38話 コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療 野見山崇

私もコロナ禍を言い訳にしばらく研究から遠ざかっている。今年は知恵を絞って研究者としての再起を果たしたいものである。

<残心>古民家カフェ
古民家をカフェに改築し、営業している全国のお店を紹介するテレビ番組を時々見ます。古い建物をお洒落にリノベーションして活用する取り組みは、古いものを大事にしたい私としては嬉しいことです。床の間や縁側、組子細工など、贅沢につられた昔の日本家屋は芸術品と言えます。でも、その番組を見ていつも妻と言うことは“千代町にあったうちの実家の方が豪華だったね”です。第31話の残心でも少し触れました大正12年に私の曽祖父が立てた崇福寺の目の前にあった古い家。あの家を古民家カフェにしていたらきっと素敵になっていたでしょう。先日お墓参りに行った際、覗いてみたら跡形もなくなり、ビルが完成間近になっていました。古いものを護るのは時間がかかりますが、壊すのは一瞬です。













残心(ざんしん)】日本の武道および芸道において用いられる言葉。残身や残芯と書くこともある。文字通り解釈すると、心が途切れないという意味。意識すること、とくに技を終えた後、力を緩めたりくつろいでいながらも注意を払っている状態を示す。また技と同時に終わって忘れてしまうのではなく、余韻を残すといった日本の美学や禅と関連する概念でもある。(Wikipediaより一部抜粋・転載)






【第01話】多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン
【第02話】HbA1cの呪縛
【第03話】糖尿病と癌
【第04話】糖毒性という名のお化け
【第05話】医者らしい服装とは?
【第06話】食後高血糖のTSUNAMI
【第07話】DMエコノミクス
【第08話】インクレチンは本当にBeyondな薬か?
【第09話】守破離(しゅ・は・り)
【第10話】EMPA-REG OUTCOMEは糖尿病診療の世界を変えるか?
【第11話】新・糖尿病連携手帳
【第12話】過小評価されている抗糖尿病薬・GLP-1受容体作動薬
【第13話】ADAレポート2016
【第14話】メトホルミン伝説
【第15話】Weekly製剤を考える
【第16話】糖と脂の微妙な関係
【第17話】チアゾリジン誘導体の再考~善とするか「悪とす」か~
【第18話】糖尿病患者さんの死因アンケート調査から考える
【第19話】Class EffectかDrug Effectか
【第20話】糖尿病治療薬処方のトリセツ執筆秘話
【第21話】大規模臨床試験の影の仕事人
【第22話】低血糖の背景に、、、
【第23話】ミトコンドリア・ルネッサンス
【第24話】血管平滑筋細胞の奥深さ
【第25話】運動療法温故知新
【第26話】糖尿病アドボカシー
【第27話】GLP-1の真の目的は何か
【第28話】糖尿病連携手帳 第4版
【第29話】残存リスクを打つべし!
【第30話】糖尿病という病名は変更するべきか
【第31話】合併症と併存症
【第32話】メディカルスタッフ
【第33話】新・自己管理ノート
【第34話】グルカゴン点鼻薬とスナッキング肥満
【第35話】SGLT2阻害薬 For what?
【第36話】血糖値と血糖変動のアキュラシー
【第37話】経口GLP-1受容体作動薬
【第38話】コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療
【第39話】HbA1cはウソをつく、こともある

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