医療人として | 糖尿病の治療について | 糖尿病についてのコラム | プロフィール
順天堂大学が日本で最も歴史ある医学部であることは、誰もが知るところである。しかし、順天堂大学医学部附属の6病院のうち、本院に次いで古いのが静岡病院であることは意外に知られていない。昭和37年春、当時の伊豆長岡町長であった狩野精一氏は突然、お茶の水の順天堂を訪問した。伊豆長岡町とは縁もゆかりもない順天堂であったが、財政を圧迫し閉院寸前であった町立伊豆長岡病院を救って欲しいと、狩野氏は当時の理事長有山登先生に懇願したらしい。最初は断った理事長であったが、何度も足を運ぶ町長の熱意に動かされ、町立伊豆長岡病院に順天堂から医師4名と看護師長らを派遣することが始まった。その後、病院の運営は改善。町立伊豆長岡病院は順天堂に譲渡され、昭和42年4月1日順天堂伊豆長岡病院が誕生した。当時の写真を見ると、今からは想像もつかないほど小さな建物で、温泉を利用したリハビリテーション施設などを有していたようだ。私が3年目の内科研修医としてローテートしていた平成10年、現在のA棟が免震工法による9階建て449床を有してオープンした。レジデント(住み込み)であった当時、病院直結の寮に滞在し、ベッドから飛び起きて10秒以内に病院に到着する生活を送っていたことが懐かしい。年末年始を伊豆長岡病院で過ごした私は、大晦日の真夜中に心筋梗塞で運ばれた患者さんのカテーテル検査の助手を務め、年が明けたころに冠形成術が終わって患者さんに“無事終わりましたよ”と伝えたら“先生明けましておめでとうございます”とストレッチャーに横たわった患者さんに言われたことを今でも鮮明に覚えている。その後、伊豆長岡、韮山、大仁の三町が合併し、伊豆の国市が誕生したことを切っ掛けに、平成17年3月より順天堂大学医学部附属静岡病院に名称変更された。現在当院は600床を有し、令和5年4月からは633床に増床の予定である。伊豆半島全般を含む静岡県東部医療圏の基幹病院であり、救急医療の最後の砦となっている。写真の建物右上に見えるようにヘリポートを有し、毎日のようにドクターヘリが患者さんを運んでくる。私の教授室はちょうどヘリポートの真下にあり、ドクターヘリが出動する時はWebミーティングも出来ないくらいの轟音が鳴り響く。
静岡病院糖尿病・内分泌内科は平成16年4月に開局し、諸先輩方が准教授や先任准教授として科長を務められてきたが、私は初代の教授として就任させて頂けることとなった。現在はお茶の水の本院から若い先生方がローテートして当科を支えてくれているが、静岡病院糖尿病・内分泌内科専任の入局も可能である。糖キングをお読みの若い先生方で、順天堂大学静岡病院で一旗揚げたい人はドシドシご応募いただきたい。赴任して驚いたのが、当科では一般的に言う糖尿病の“教育入院”が“支援入院”と呼ばれていたことだ。数年前の科長であった佐藤文彦先生が命名したそうだが、その頃からアドボカシーを意識していたことに感銘を受ける。現在、アドボカシー委員会ではスティグマをもたらすことばの見直しがなされているが(↓表)、文彦先生が我々より早くそれに取り組んでいたことになる。文彦先生は現在起業して産業医や医師の働き方改革の担い手のとして大活躍中である(代表プロフィール | Basical Health 株式会社)。
写真が示す通り、病院周辺は山に囲まれた自然豊かな温泉場で、伊豆長岡の古くからある温泉宿が立ち並び、近くに狩野川が流れている。最寄り駅は伊豆箱根鉄道(通称いずっぱこ)の伊豆長岡駅で、20分ほどローカル電車に揺られると新幹線の最寄り駅であるJR三島駅に着く。実は最近、この三島駅周辺が熱い!コロナ禍でリモートワークが増えた影響で、首都圏内から三島市をはじめとした三島駅周辺への移住者が急増しているのだ。東京まで新幹線で1時間以内、水と空気が綺麗で美味しいこの辺りは、まさに健康に人間らしく生活できる場所と言える。天気がいい日は富士山を拝むことも出来る。さらに、柿田川湧水公園では富士の湧き水が汲み放題で、この水で焼酎を割ると絶品である。また、三島駅の北側に位置する駿東郡長泉町は、高校生まで医療費が無料など子育て世代を中心とした住民思いの政策が功を奏し、人口が急増し地価も上昇している。
都会の喧騒に疲れたら、静岡東部で真の“ゆたか”な暮らしをしてみてはいかがか?
参考資料:順天堂大学医学部附属静岡病院40周年記念誌
<残心>大河ドラマと共に
福岡大学に勤務していたころ、大河ドラマ軍師官兵衛で福岡の黒田官兵衛が取り上げられ、私は福岡県知事に正式に使用許可を頂き、キャラクター使用させていただき講演をしていました。そして今回、順天堂大学静岡病院に来た年の大河ドラマは鎌倉殿の13人、北條義時が主人公でドラマの舞台は伊豆です。三島市、伊豆の国市、伊豆市には三嶋大社をはじめとした北條家や源頼朝ゆかりの地が多数あり、いま注目の観光スポットになっています。なかでも、北條時政が建立した願成就院にある、国宝運慶作の五仏は圧巻です。是非お参りいただき、北條家や坂東武者の歴史に思いを馳せてみて頂きたい。福岡の黒田官兵衛、伊豆の北條義時と大河ドラマと共に異動しているようです。そして来年は“どうする家康”で徳川家康が主役で浜松が舞台です。これからは静岡が熱いです。
【残心(ざんしん)】日本の武道および芸道において用いられる言葉。残身や残芯と書くこともある。文字通り解釈すると、心が途切れないという意味。意識すること、とくに技を終えた後、力を緩めたりくつろいでいながらも注意を払っている状態を示す。また技と同時に終わって忘れてしまうのではなく、余韻を残すといった日本の美学や禅と関連する概念でもある。(Wikipediaより一部抜粋・転載)
【第01話】多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン
【第02話】HbA1cの呪縛
【第03話】糖尿病と癌
【第04話】糖毒性という名のお化け
【第05話】医者らしい服装とは?
【第06話】食後高血糖のTSUNAMI
【第07話】DMエコノミクス
【第08話】インクレチンは本当にBeyondな薬か?
【第09話】守破離(しゅ・は・り)
【第10話】EMPA-REG OUTCOMEは糖尿病診療の世界を変えるか?
【第11話】新・糖尿病連携手帳
【第12話】過小評価されている抗糖尿病薬・GLP-1受容体作動薬
【第13話】ADAレポート2016
【第14話】メトホルミン伝説
【第15話】Weekly製剤を考える
【第16話】糖と脂の微妙な関係
【第17話】チアゾリジン誘導体の再考~善とするか「悪とす」か~
【第18話】糖尿病患者さんの死因アンケート調査から考える
【第19話】Class EffectかDrug Effectか
【第20話】糖尿病治療薬処方のトリセツ執筆秘話
【第21話】大規模臨床試験の影の仕事人
【第22話】低血糖の背景に、、、
【第23話】ミトコンドリア・ルネッサンス
【第24話】血管平滑筋細胞の奥深さ
【第25話】運動療法温故知新
【第26話】糖尿病アドボカシー
【第27話】GLP-1の真の目的は何か
【第28話】糖尿病連携手帳 第4版
【第29話】残存リスクを打つべし!
【第30話】糖尿病という病名は変更するべきか
【第31話】合併症と併存症
【第32話】メディカルスタッフ
【第33話】新・自己管理ノート
【第34話】グルカゴン点鼻薬とスナッキング肥満
【第35話】SGLT2阻害薬 For what?
【第36話】血糖値と血糖変動のアキュラシー
【第37話】経口GLP-1受容体作動薬
【第38話】コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療
【第39話】HbA1cはウソをつく、こともある
【第40話】糖尿病治療ガイド2022-2023:私のポイント
【第41話】順天堂大学医学部附属静岡病院
【第42話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
【第43話】降圧薬のBeyond
【第44話】糖尿病治療はデュアルの時代
【第45話】兄貴に捧げるラストソング
【第46話】血糖だけにこだわらない!糖尿病治療薬の考え方・使い方
【第47話】糖尿病は治るのか?
【第48話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)
【第49話】医師の働き方改革
【第50話】GLP-1受容体作動薬のセレクト
【第51話】肥満症の治療薬
【第52話】Dear ケレンディア
【第53話】高齢ダイアベティスの極意~キョウイクとキョウヨウ~
【第54話】尿アルブミンは心血管の鏡
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