糖尿病専門医・指導医 野見山崇 | 糖尿病についてのコラム

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糖キング 糖の流れに魅せられた男が語る(Talking)糖尿病のお話。 二田哲博クリニック 糖尿病専門医・指導医 野見山崇

【第58話】
12th JADEC年次学術集会

第12回JADEC年次学術集会パシフィコ横浜で2025年7月19・20日の2日間行われた。第10回までは日本糖尿病協会年次学術集会と銘打っていた会だが、第11回から連携手帳同様(第57話)JADECになり、今回は初の関東地域での開催だった。また、遅野井健・道口佐多子W会長で開催される初めての会でもあった。過去には京都をメインに西日本で行われていた本会が、横浜開催されるという事で、大会長はじめ我々プログラム委員も参加者の減少を心配していたがそれは取り越し苦労に終わり、例年に勝るとも劣らぬ2000人を超える参加者を迎えることが出来た。W会長の漫才のような会長講演で始まった学術集会は、いつもながらの熱いディスカッションの2日間であった。 私が担当したセッションに“医療者と共創シンポジウム”というのがあった。JADECには企業委員会という部門があり、ダイアベティスに関係する製薬メーカーや医療機器メーカーの代表が集まり、企業人としてだけでなく医療者として様々な啓発活動を企画運営している。今回のシンポジウムは企業委員会の代表を務める住友ファーマ小山由起氏と進行役を務めた(写真)。

糖キング第58話「12th JADEC年次学術集会」 野見山崇

今回は“今、必要とされる企業人とは?”という重要なテーマについて議論が交わされた。ポストコロナ時代、コロナ禍で人と人の交流が希薄になったのは我々の業界も同じである。企業の情報提供の場は激減し、講演会はWeb配信が主流となりつつある。そんな中飛び出した恐ろしい言葉が“MR不要説”だ。薬剤の情報提供はホームページや一部の社員がWeb面談するのみで、病院やクリニック担当のMRは不要であるという考え方だ。製薬メーカーや機器メーカーのホームページをクリックすると、アニメのキャラクターが飛び出しAIを通じてボーカロイドの様な声で医療者の質問に答える時代が来るかもしれない。しかし、今回のシンポジウムで意外な事実が判明した。医療者は何らかの形でMRの存在を必要としていることが分かったのだ。

糖キング第58話「12th JADEC年次学術集会」 野見山崇

もちろん、JADEC年次学術集会に参加されている皆さんがCDE活動に熱心で、意識が高いという強いバイアスが働いていることは間違いない。しかし、98%が必要としていると答えているからには、間違いなく必要とされている場面があり、医療者や糖尿病のある人の役に立っていることの証である。もしかしたら世間や医療情報サイトで流れている“MR不要説”は、ジェネリック医薬品を強制し、薬価を下げて製薬メーカーを叩き、研究費を抑制して日本の医学を骨抜きにするという国策が生んだフェイクニュースかも知れない。
では、どんなMR(企業人)が求められているのか。参加した医療者の回答をまとめると、下記の様になった。

 1)誠実な対応と人間性の重視
 2)正確で適切な情報提供
 3)患者ファーストの姿勢
 4)メディカルスタッフへの情報共有
 5)利益追求ではなく、患者や医療現場への貢献
 6)柔軟性と融通性
 7)医療を支える一員としての意識
 8)アクセスのしやすさと迅速な対応
 9)新しく実践的な情報の提供
10)教育の充実
11)統一した会社姿勢
12)SDGsなどの社会貢献活動

この結果を見て、一般の方や糖尿病のある人として通院されている皆さんはどう思ったであろうか。きっとイメージが変わったであろう。企業人(MR)は販売員でも営業の人でもない“医療者”なのだ。私はこの中でも特に、3.患者ファーストの姿勢、4.メディカルスタッフへの情報提供を重要視している。 これらを踏まえて、今後の企業人(MR)が活躍できるもしくは活躍してほしい役割を私なりに考えた。その答えは“へき地医療の手助け”だ。新臨床研修医制度や新専門医制度、医師の働き方改革といった国の愚策によって、医師の偏在化は顕著になり、内科や外科といったメジャー診療科の医師は減少し、地方やへき地で高齢者の診療をする内科医は不足し、医療情報も十分行き届いていない。そんな地方で頑張っている医師に、最新の専門家の診療スタイルや治療方針をFace to Faceで伝える役割が出来るのではないか。もちろん企業人は医療行為は出来ない、しかしメディカルスタッフの一員として正しい情報を伝える役割は担えるはずだ。 2003年ソウルで開催されたアジアミトコンドリア研究会(Mitochondrial pathogenesis : from genes and apoptosis to aging and disease : Asian Society for Mitochondrial Research and Medicine. Scientific Meeting (1st : 2003 : Seoul, Korea) : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive)に参加した際、タクシーの運転手から「何科のドクターですか?」と尋ねられ、「内科で糖尿病を専門に診ています」と応えると、「あなたは偉いね。韓国人は医学部卒業したらみんな美容外科に行くから、まともな内科や外科の医者がいなくて困ってるよ」と言われた。まさか冗談でしょと思っていたが、、、。あれから20年経って、わが国でも“直美(ちょくび)”という言葉が流行り出した。医師、メディカルスタッフ、企業人が一丸となってダイアベティスケアを盛り上げ、直美を減らしてまともな内科医を増やすムーブメントを起こしたい。


<残心>オジー・オズボーン
Heavy Metalの神様オジー・オズボーン氏がご逝去されました。オジーはヘヴィメタの草分け、開祖と呼んでも過言ではない存在で、もちろん私も教徒の一人です。順大剣道部の故・植木忠伸先輩や後輩の片岡弘行君もオジーが大好きで、片岡君とは一緒にライブにも行きました。開演時間から30分以上遅れて登場し、寝間着のスエットみたいな服を着て武道館のステージで飛び跳ねる中年のオジーを見て、当時の若者だった我々は大興奮でした。黒魔術的な過激なパフォーマンスで知られ狂人扱いされいたこともあるオジーですが、私が米国留学中に放送されていたオズボーンズという家族のリアリティ番組ではただのお父さんでしたし、晩年はパーキンソン病を患っておられたそうなので、根は真面目な人だったのでしょう。そもそも“変な人”とか“変わった人”とは、誰が何を基準に決めるのでしょうか。きっとそう決めている人が本当は変人か偏人なのでしょう。思い出したようにオジーのCDを久々に聴きました。最近の軽薄な流行歌と違って魂に響きます。私が一番好きなオジーの曲はCrazy Trainですが、今もし私がラジオのパーソナリティーだったら“See You on the Other Side”をかけたいと思います。植木さんと片岡君は今頃あっちの世界でオジーのライブを堪能しているでしょう。NOW! 心からご冥福をお祈り申し上げます。

糖キング第58話「12th JADEC年次学術集会」オジー・オズボーン 野見山崇





残心(ざんしん)】日本の武道および芸道において用いられる言葉。残身や残芯と書くこともある。文字通り解釈すると、心が途切れないという意味。意識すること、とくに技を終えた後、力を緩めたりくつろいでいながらも注意を払っている状態を示す。また技と同時に終わって忘れてしまうのではなく、余韻を残すといった日本の美学や禅と関連する概念でもある。(Wikipediaより一部抜粋・転載)






【第01話】多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン
【第02話】HbA1cの呪縛
【第03話】糖尿病と癌
【第04話】糖毒性という名のお化け
【第05話】医者らしい服装とは?
【第06話】食後高血糖のTSUNAMI
【第07話】DMエコノミクス
【第08話】インクレチンは本当にBeyondな薬か?
【第09話】守破離(しゅ・は・り)
【第10話】EMPA-REG OUTCOMEは糖尿病診療の世界を変えるか?
【第11話】新・糖尿病連携手帳
【第12話】過小評価されている抗糖尿病薬・GLP-1受容体作動薬
【第13話】ADAレポート2016
【第14話】メトホルミン伝説
【第15話】Weekly製剤を考える
【第16話】糖と脂の微妙な関係
【第17話】チアゾリジン誘導体の再考~善とするか「悪とす」か~
【第18話】糖尿病患者さんの死因アンケート調査から考える
【第19話】Class EffectかDrug Effectか
【第20話】糖尿病治療薬処方のトリセツ執筆秘話
【第21話】大規模臨床試験の影の仕事人
【第22話】低血糖の背景に、、、
【第23話】ミトコンドリア・ルネッサンス
【第24話】血管平滑筋細胞の奥深さ
【第25話】運動療法温故知新
【第26話】糖尿病アドボカシー
【第27話】GLP-1の真の目的は何か
【第28話】糖尿病連携手帳 第4版
【第29話】残存リスクを打つべし!
【第30話】糖尿病という病名は変更するべきか
【第31話】合併症と併存症
【第32話】メディカルスタッフ
【第33話】新・自己管理ノート
【第34話】グルカゴン点鼻薬とスナッキング肥満
【第35話】SGLT2阻害薬 For what?
【第36話】血糖値と血糖変動のアキュラシー
【第37話】経口GLP-1受容体作動薬
【第38話】コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療
【第39話】HbA1cはウソをつく、こともある
【第40話】糖尿病治療ガイド2022-2023:私のポイント
【第41話】順天堂大学医学部附属静岡病院
【第42話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
【第43話】降圧薬のBeyond
【第44話】糖尿病治療はデュアルの時代
【第45話】兄貴に捧げるラストソング
【第46話】血糖だけにこだわらない!糖尿病治療薬の考え方・使い方
【第47話】糖尿病は治るのか?
【第48話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)
【第49話】医師の働き方改革
【第50話】GLP-1受容体作動薬のセレクト
【第51話】肥満症の治療薬
【第52話】Dear ケレンディア
【第53話】高齢ダイアベティスの極意~キョウイクとキョウヨウ~
【第54話】尿アルブミンは心血管の鏡
【第55話】SGLT2阻害薬 For what?第2章
【第56話】“あいうえお、かきくけこ、さしすせそ”
【第57話】JADEC連携手帳 第5版
【第58話】12th JADEC年次学術集会
【第59話】腫瘍糖尿病学

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